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出版物紹介 |
up date |
04 November, 2011 |
吉川顯麿 『9.11&3.11 崩壊から再生へ』 2011年10月、幻冬舎ルネッサンス社・出版、\1200 |
味わいのあるエッセイ集である。
前半では、10年前N.Y.で自身が体験した同時多発テロの衝撃の現実を一外国人留学者の視点、著者の日常から描いている。留学生活で見た国際テロへのアメリカ政府の対応やN.Y.市民の悲しみの状況を描き、巨人のアメリカが戦後たどってきた国際政治の歴史的現実を紹介しながら、この国と国民に対して独善に陥ることを戒め、反省を迫り、平和への強い希求の気持ちを描いている。
後半は、3.11東日本大震災と福島原発事故の衝撃を、石川県・能登半島の地域活性化やロシア人留学生の受け容れ活動に取り組む著者の日常から描き、被災者への深い同情とともに国民目線での震災復興と原発事故への批判や撤退の提言を行なっている。
図入りの復興町づくりの提案や復興財源の提案は大胆で面白い。
作品の中へ読者をぐいぐいと引きずりこんで行く文章は魅力的である。エッセイ集の形ではあるが内容的には読み応えがあり、日常を取り上げながら世界や人間、政治や国際政治のあり方といった大きな問題にアプローチしていく姿勢に共感が持てる。一読をお勧めする。
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